北九州市八幡西区にリフォーム、リノベーション専門の「江田工務店」がある。
江田工務店が行うリフォームの特筆すべきポイントは3つ。
- 思い出が詰まった家の面影を活かしながら、より安全で快適な住まいに生まれ変わらせること。
- 設計、デザイン、施工の全工程を自社で一括しているので、より適切に早く安くできること。
- 家具職人がいるので、世界で一つのオーダー家具が自分の家にぴったり収まること。
実は3つのポイントを実現するには、それぞれ独立した技術や体制が必要になる。
わずか4人の工務店がどのようにそれらを整えていったのか。
40年の歴史の中で築き上げられた独自性ついて代表の江田社長に話を聞いた。
代表取締役:江田誠一朗さん
「実家をリフォームしてもらえませんか?」
こんな相談が江田工務店にはよせられる。
高齢のご両親や祖父母を想い、また両親から大切な家を引き継いだ現役世代からの依頼も多いという。
「この前も『おばあちゃんがリフォームしたいといっているので』と娘さんが調べて連絡をくれました」
江田工務店が受ける依頼の特徴の一つが、家具を含めた空間づくりのすべてを任されること。
「お客さんの『(古い家から)取った一部分でいいからちょっとした形で活かしてほしい』という要望にはなるべく応えたい」
柱を新しい住まいに据え付けられる家具の一部に使ったり、解体時に出た建材から家具を作ったりする。
ただ古いものを壊して新しいものを作るのではなく、住む人と一緒に築き上げられた思い出も大切にしたいという江田社長の思いが伝わってくる。
壊したら、基礎がシロアリでボロボロ
「思い出を大切にしつつ、綺麗にする」といえば聞こえはいいかもしれないが、実はリフォームは一筋縄ではいかない。
「リフォームは壊してみないとどんな構造かわからない状態からスタートすることが新築との最大の違い。経験がものをいう仕事です」
実際に、「壊してみたら基礎がシロアリでボロボロだった。前の業者が、壁の中にゴミを詰めてめちゃくちゃなことをしていた」
そんな、にわかには信じられないケースも現実にはあるという。
「経験がものをいう」といいながら、江田社長自身はまだ40代と業界の中では若手。
その江田社長が引っ張る江田工務店がリフォーム会社として、八幡の地で基盤を整えるまでには紆余曲折があった。
リフォーム工事ノウハウの蓄積
江田工務店は1985年、江田社長の父、江田澄夫氏が創業したことに始まる。
「新築工事から始まりましたが、当時はバブル景気で店舗の内装工事を請けることで事業が発展していきました」
工事の特性上リフォーム業者との付き合いが増え、工事スピードも求められる。
「この時に、後に僕たち二代目に伝えられていくリフォーム工事のノウハウが蓄積されていきました」
江田社長が中学生になった頃から、夏休みに現場に連れて行かれるようになった。
「物を運んだり、掃除したりと、楽しんでついて行っていました」
そしてあるとき、工事の元請けの人との会話がきっかけで江田社長も父と同じ道を歩むことになる。
「父親の前で『大きくなったら、お父さんと一緒にするんかねー?』と聞かれて、思わず『はい』といってしまったんです」
この日を境に父と同じ仕事をする将来を意識するようになった江田社長は、高校卒業後“社会勉強のため”ガラス工場に就職。
ただ就職から半年後に、父親の会社の職人が辞めて空きが出て戻ってくることになった。
会社の窮地で出会った家具作り
数年の時を経てリーマン・ショックあたりから仕事がなくなり、会社が窮地に。
「時間が余るようになったので、仕事の合間にオーダーメイド家具屋さんの工場に応援に行くことになったんです」
3〜4年間通ううちに家具作りを覚え、最後には家具作りに欠かせない木工機械パネルソーを中古で譲り受けた。
「家具屋さんから家具の造り付け工事の依頼を受けた時に『ウチでも家具作れます』という話になって、本格的に事業として家具を作りを始めました」
とはいえ、最初は家具作りが会社のためになるのか不安だったというが、2〜3年続けることで利益につながるように。
「大工工事がない時期に救われ、会社も持ち直しました。家具作りのおかげで新しいお客さんはもちろん、設計士とも出会えました」
こうして江田工務店は、家具から建物全体まですべてオーダーメイドで、空間づくりを提供できるようになった。
費用と安全との葛藤
リフォーム工事は予想外の連続である。
「この前、大正時代の家に行ったら梁がブヨンブヨンで。家は意外と倒れないもので、柱がスカスカでも建ってるんです」
いくら事前に丁寧に調査しても、壊して初めて問題点に気づくことも少なくない。
「最初に、リフォームは壊した後に見積もりにない問題が発生する可能性があることをお伝えし、了承をもらってから進めるようにします。問題が見つかったら、できるだけ施主さんと現地に一緒に行ってもらい、丁寧に説明します」
中には100万円ほどの見積もりだったものが、30〜50万円上がることもあるという。
「この先長く住むのに、後から(安全面で)不安要素が出てくるようなリフォームはしたくない。表面だけじゃなくて、中もチェックして強度も考えておかないと、何のためのリフォームなのかわからない」
安全面のために当初のデザインが変わることもあるが、必要ならば説得もする。
「うちには設計士もデザイナーもいるので、最初のイメージを残しつつ、より強度を保てるようなデザインを提案します」
このようにいえるのも江田工務店の強み。
お客さんの「変わった!」という喜びの瞬間のために
安全性を高めるためとはいえ、お客さんの負担は最小限にとどめたい。
それを実現するためのプロセスが、朝のコーヒータイムだという。
「現場に出る前に『あそこの家、どうなった?』『うまいこといきそう?』『どうしたらお金がかからんで済むかね?』とみんなで情報を共有したり、知恵を出し合ったりするのが昔からの習慣です。お金がかかりにくくていいものを作れるやり方を決めていきます」
一つ壁を乗り越えたらまた次の壁にぶち当たるのがリフォーム工事の常。
「床をバラした時に井戸が出てきて、水脈や湿気、お祓いなどを考えなければならなくなったこともあります」
難題を克服し、お客さんが「変わった!」と喜んでくれる瞬間が一番うれしいという。
いい仕事をより早く、より安く
江田工務店は、設計から施工、アフターフォローまで社内一貫体制で行っている。
中でも設計を支える二級建築士の江田省吾さんは江田社長の弟。
「設計から現場の仕事まで任せている」と絶大な信用をおく。
社内一貫体制で対応するからこそ、施主の要望により的確に、より早く、より安く応えられる。
「外部の設計士やデザイナーにお願いすると、図面へのこだわりが強いあまり予算外の設計や非現実的なデザインになることがある。社内スタッフなら、自社が使える材料や技術を熟知した上で設計・デザインができるので無駄な予算を使わず、施主の要望にも応えやすい」
人材だけでなく、必要なところは正しくテクノロジーの力を借りる。
「昨年新たに最新のパネルソーに買い換えました。これにより最大3mの板を、誤差10分の1mm以下の精度でカットようになったので、世界で一つのオリジナル家具もぴったり収まります」
今あるものをリフォームして使う時代へ
人口減少、価値観の変化という時代の流れの中で、リフォーム市場は横ばいかやや右肩上がりに伸びていくという予測もある。
「今あるものをリフォームして使う、という考えがより広がってくるのではないかとか考えています」
ただ繰り返し述べたように、リフォームは経験がものをいう仕事。
需要が増えても、職人がいなければ応えることができない。
「僕らのような技術職は2〜3年経験して指示されたことができるようになり、5年でやっと一人前といわれる世界です。そこからさらに現場に合わせたことができるスキルを身につけていきます」
いい仕事を提供するには、いい人材と長く関係が保てるようにする必要がある。
「最近新しく入った家具職人は柔術の選手でもあり、いつか自分の教室を持ちたい、二足の草鞋で頑張りたいというので応援したくなりました」
今年からスポンサーとして道着にロゴを入れたり、優勝賞金を出すことにしたという。
「それが本人のモチベーションになり、長く関係を保てるならお互いにとっていいこと。仮に独立してもうちの仕事を受けてもらえるような関係でいられたら」
高い技術を提供し続けられるよう、貴重な人材といい関係が保てるモデルケース作りも模索してゆく。
(取材日2022/12/25 阿部由貴)
企業情報
会社名 | 株式会社江田工務店 |
設立 | 2002年9月 |
代表者名 | 代表取締役 江田誠一朗 |
事業内容 | 住宅リフォーム、リノベーション、店舗内装、外壁塗装、別注家具、建具製作、増改築、椅子·テーブル製作 |
所在地 | 〒806-0066 |
電話番号 | 093-236-0430 |
ホームページ | https://edakomuten.com/ |
江田誠一朗さんより
江田工務店は、住宅と店舗の空間づくりを行うリフォームとリノベーションの専門店です。 ご要望をしっかりとお伺いした自社スタッフが設計を行い、デザイン、施工まで全工程に責任をもって対応します。オーダーメイド家具、修繕、改装など幅広い実績と経験がございますので、安心してお任せください。